行政書士試験は、学習範囲がとても広い試験です。
すべてを完璧に理解し、満点を取ることを前提にすると、途方に暮れてしまう人も多いのではないでしょうか。
しかし、行政書士試験は、満点を狙う試験ではありません。
配点や合格基準を冷静に見ていくと、得点源にすべき科目と、ある程度割り切って向き合う科目があることがわかります。
この記事では、9か月間試験勉強に取り組んだ筆者が、実際に力を入れたところと、割り切ったところについて、自身の経験を踏まえてまとめていきます。
まず全力を注ぐべき科目はここだった
行政書士試験において、行政法と民法が最重要科目であることは、多くの受験生が感じているところではないでしょうか。
私自身も、学習を進める中で、この2科目には最も多くの時間を割くべきだと感じました。
さらに、個人的には憲法についても、安定した得点源にできる科目だと考えています。
ここからは、それぞれの科目について、実際にどのように向き合ったのかをお伝えします。
行政法は「最優先」で取り組むべき理由
学習の順番としては、憲法や民法から入ることも多いと思います。
ただ、試験全体を見たときに、最も優先して力を注ぐべき科目は、行政法だと感じました。
行政法の配点は、五肢択一19問、多肢選択2問、記述式2問で、合計112点となっています。
合格基準が180点であることを考えると、行政法の得点が合否を大きく左右するということが言えるのではないでしょうか。
初学者にとって行政法は、民法や憲法に比べて馴染みが薄く、テキストを読んでも最初のうちはピンとこないことが多いかもしれません。
しかし、難易度という点では民法ほど高くはなく、確実に得点源とすることが可能な科目であると感じました。
民法も避けて通れない軸になる科目
民法の配点は、五肢択一9問、記述式2問で合計76点となっており、行政法に次ぐ配点の多さです。
この二科目の合計配点が188点であることを考えると、満点は難しいとしても、7~8割程度の正答率は確保したいところではないでしょうか。
こうした配点の高さに加えて、私が民法に注力すべきと考えるもう一つの理由は、問題の難しさです。
民法は、私たちの日常生活に最も身近な法律でありながら、試験科目として見た場合にはとても難しい、というのが、初学者である私の第一印象でした。
民法の出題は、その多くが事例問題です。
そして、その事例が非常に複雑であることも少なくありません。例えば、「善意か悪意か」といった当事者の主観によって、法の適用が異なるケースもあります。
そのため、事例の中からどの要素が重要なのかを慎重に読み取り、判断する力が求められます。
こうした法律的な思考に慣れ、身につけるためにも、民法の学習には十分な時間を割く必要があると感じました。
憲法は「少ない労力で得点が狙える」科目だった
憲法は、五肢択一5問、多肢選択1問で、合計28点の配点です。
あくまで私個人の感想ではありますが、学習範囲の狭さや理解のしやすさから、憲法は行政法や民法に比べると、「少ない労力で得点が狙える」科目であると感じました。
単純に、私が使用していたテキストの分量だけを見ても、憲法は行政法の半分以下、民法の3分の1程度のページ数でした。
内容に関しても、「判断する」「考える」というよりは、「覚える」ことで解答できる問題が多い印象です。
五肢択一に関して言えば、全問正解を狙える科目であり、私自身、実際に本試験では5問すべて正解することができました。
憲法は、限られた学習時間の中で、非常に貴重な得点源になったと感じています。
「全部はやらない」と割り切った科目もあった
行政法、民法、憲法を得点の軸として学習を進める一方で、すべての科目に同じだけの時間をかけることはできないと考え、半分程度の得点でも構わないと割り切った科目もありました。
まず、商法についてですが、配点は五肢択一5問で20点です。例年、商法から1問、会社法から4問の出題となっています。
テキストの分量としては憲法よりも少なく、単純に条文知識を問う問題が多い一方で、覚えるべき事項が密集している印象があり、すべてを網羅するのは非効率だと感じました。
そのため、5問のうち2問から3問の正解を狙うにとどめ、「会社の設立」や「株式」など、なるべく覚えやすい項目に絞って学習する方法を取りました。
基礎法学については、五肢択一2問、合計で8点の配点となっています。特定の法律について学ぶものではなく、勉強の方向性が掴みにくいことから、得点源として当てにしないと割り切ることにしました。
配点の低さを考えても、合否を分ける科目ではないと判断し、直前期に予想問題を確認する程度にとどめました。
基礎知識は“点を取りに行く部分”だけを重視した
基礎知識は、五肢択一14問、合計56点の配点ですが、合格基準点が24点に設定されています。
仮に全体の得点が180点を超えていたとしても、基礎知識が24点に満たない場合は不合格となります。
だからこそ、この「24点=6問」を確実に取るために、どの分野に力を入れるかの見極めがとても重要だと感じました。
基礎知識は大きく以下の4つの分野に分かれます。
①政治、経済、社会など
②業務関連法令(行政書士法、戸籍法、住民基本台帳法)
③情報通信関連
④文章理解
このうち私が得点源と位置付けたのは、①を除いた②③④です。
それぞれについて、理由を見ていきましょう。
文章理解は「確実に3問取る」前提で考えた
行政書士試験の60問のうち、文章理解は58~60番目の最後の3問として出題されます。
この3問は、冷静に取り組めば、必ず正答できる内容だと感じました。
実際に、私も本試験では3問すべて正解することができましたし、57問解き終えたあとの疲れた状態でも、十分対応できるという印象でした。
学習に多くの時間を割く必要はなく、並べ替え・空欄補充・脱文挿入といった各形式を確認し、数年分の過去問を解く程度で、対策としては十分だと感じました。
業務関連法令・情報通信は“残り3問”を取りにいく
業務関連法令は、2024年度試験から新たに出題されている分野です。
過去2年では、行政書士法から1問、戸籍法または住民基本台帳法から1問が出題されました。
いずれも難しい内容ではなく、テキストと条文をしっかり押さえることで得点が可能だと感じました。
ただし行政書士法については、2026年1月1日に改正法が施行されましたので、改正に対応したテキストや六法の使用をお勧めします。
そして、情報通信分野からは4問が出題されます。近年よく耳にするIT関連用語や、個人情報保護法に関する内容が中心で、こちらも貴重な得点源となります。
私はテキストと過去問以外の特別な対策はしませんでしたが、IT用語については、よく耳にする単語の正確な意味を一度確認しておくだけでも有効だと感じました。
政治・経済・社会はあえて深追いしなかった理由
この分野からの出題は5問と、基礎知識の中ではウエイトの大きい分野です。
しかし、範囲の膨大さと出題内容の予想の立てにくさから、私は学習の優先順位を下げる判断をしました。
国内外の政治や経済に日頃から高い関心を持っているわけではなかったため、試験対策として一から知識を入れるには、それなりの時間がかかると感じました。
それよりは、学習範囲がわかりやすい業務関連法令や個人情報保護法などに力を入れたほうが、得点できる可能性は上がると考えました。
ただし、過去問で出題傾向は確認し、直前期にはニュースや新聞に目を通すようにして、制度の内容や用語の意味など、曖昧な部分は確認するようにしていました。
全部を完璧にやろうとしなくていい
勉強を始めた当初は、できるだけすべてを理解し、漏れなく対策しなければいけないと思っていました。
しかし、試験の配点や出題数を冷静に見ていくうちに、この試験は満点を取ることを求められているわけではないのだと、少しずつ感じるようになりました。
限られた時間の中で合格点に届くためには、どこに力を入れ、どこを割り切るかを決めることも、学習の一部なのだと思います。
合格に必要な180点をどう積み上げるか、その方法は人それぞれであり、科目による得手不得手などを踏まえつつ、自分に合った方法を模索することが必要なのだと感じました。
おわりに
この記事では、筆者が1回目の受験までに実践した、行政書士試験における勉強時間や力の配分についてご紹介しました。
私自身、勉強を進める過程では、「テキストの隅から隅まで」「1から順番に」といった考えに引っ張られ、完璧を目指そうとしてしまう場面がたびたびありました。
しかし、目指すのは高得点や満点ではなく、「合格」であることに立ち返ったとき、科目や分野ごとに力の入れ方を調整することも、試験対策の一つなのだと感じるようになりました。
これから勉強を始める方や、今一人で迷いながら勉強を続けている方にとって、この記事が少しでもヒントになれば嬉しいです。



コメント